アメリカ臨床留学で学んでこと

幸運なことに私は2度のアメリカ臨床留学を経験することができました。留学には多大なエネルギー要ります。企業の海外派遣のような経済的なバックアップもなく、旅費から何から全て自腹です。勤務先からの給料も少なく、何かと大変です。しかし沢山の人との出会いを含めて巨額のお金でも買うことのできない、かけがえのない貴重な経験を得ることができます。アメリカ留学は私や家族にとっては一生の宝物となりました。これから留学をしようと思っている学生諸君、若い先生方には是非とも留学の夢を叶えて頂きたいと思います。アメリカに臨床留学するためにはUSMLEという試験を受験して、最低限Step1と2、English testに合格する必要があります。Step1と2、English testに合格するともらえるStandard ECFMG Certificationがあれば、大体の病院で臨床研修を受けることができます。州によって異なりますが、1年か2年の臨床研修の後にStep2 CSA(Clinical Skill Assessment) とStep3を受験する資格がもらえます。Step3まで合格すると、所属する病院のある州の医師免許(State License)が得られます。日本で受験できるStep1と2は基礎医学と臨床医学全般から出題されますので、受験を考えている方は沢山の知識の残っている医学部卒業前後に受験されることをお勧めします。私の場合は医学部6年生の時にStep 1を、卒後すぐにStep 2とEnglish testを受験しました。ちなみに私が受験したころと今とでは受験料は勿論、試験の方法も相当変わったようです。よく確認して下さい。
日本の医師国家試験は点数に関係なく合格すれば良いのですが、アメリカ臨床留学で有名な病院での研修を希望するのであれば、USMLEの点数が重要になります。余裕のある方は合格だけで満足せずにしっかりと勉強して、できるだけ良い点数で合格するように目標を立てて頑張って下さい。

 基礎医学研究留学も魅力がありますが、私にはその経験がありません。臨床留学は実際に患者さんを診察したり、手術をしたりで日本の病院での業務と一緒です。でも決定的な違いは、脳神経外科手術の適応となる患者さんしかいないということです。アメリカで脳神経外科と言うと特殊な診療科であり、患者さんのほとんどは他の科から紹介です。外来で手術適応があるかどうかを判断し、適応があれば脳神経外科で手術、なければ紹介元で引き続き診てもらうことになります。日本のように軽い頭痛やケガ、めまいなどで直接脳神経外科を受診することは基本的にありません。大学病院などの脳神経外科は年間1200例以上の手術を行っています。私の所属していたMayo clinicが年間3000件、Wisconsin大学が年間1800件の手術でしたので、臨床留学をすれば相当数の経験を積むことができます。勿論自分が全て術者ではありませんが、一流の先生の助手で手術に参加できるだけでも非常に光栄なことで、多くのことが学べます。外科系は手術のskill upも臨床において非常に重要なことです。私はこのskill upをアメリカ臨床留学で得ることができました。
 それだけではありません。2回目の留学では、子供たちを通して多くの人に巡り合うことができました。Skill up以上のものを得たかも知れません。



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