地獄の引越し

 アメリカでの生活基盤は自分なりには万全で、今すぐにでも渡米できる状態でしたが大きな関所が残ってました。引越しです。長女のリハビリの器具など家族が増えれば荷物も多くなり、最初の留学の時と比べて何倍もの荷物でした。生活準備のために渡米した時にもある程度の荷物はもって行きましたが、それが焼け石に水と感じるほど沢山の荷物でした。金額も相当かかるだろうなって思っていましたが、見積もりで最初に聞かれたのが「企業勤務で海外転勤での引越しですか?」ということでした。一流企業であれば引越し代も何も会社で負担してくれるそうですので、梱包から掃除から全部任せてしまうことができるそうです。うらやましい限りですが私は企業勤務でなくただの三流勤務医、しかも自分の意思での留学ですから引越し代など当然自腹です。貧乏勤務医の引越しであり、我々ができることは何でもするからできるだけ安く済ませたい旨を伝えました。海外引越しは一番信頼していたヤマト運輸にお願いしましたが、一流企業勤務ではなく貧乏勤務医と身分がばれても荷物の梱包や費用など大変良くして下さり大変感謝しています。ダンボールそれぞれに入っているものをこと細かく伝票に記さなくてはなりません。本が何冊、皿が何枚までのレベルで沢山の伝票に記入しました。すぐに使わないものは船便で送り、長女が車で使うチャイルドシートや特殊な椅子、食器や冬の衣料品は航空便で送りました。
 やっと送れて一安心と思ったのも束の間、これからが更に地獄でした。借りていたマンションは勤務先病院の理事長のもので、万が一の長女の帰国にも備えて当初はアメリカに送らない荷物はそのままで良いとのことだったのですが、突然気が変わったらしく、ずっと空けておくのがもったいないからと撤去を命じられました。出発が3日後に迫っており、電気・ガス・電話の解約、自動車の処理、区役所への手続きなどもまだなのに再度引越しです。しかも出発直前まで外来業務は免除になりません。最悪だったのは長女に万が一があった時に帰る所が東京になくなり、すぐ近くの勤務していた病院にお世話になることもできなくなってしまいました。これには精神的にまいりましたが仕方ありません。アメリカに送らなかった荷物を茨城にある私の実家に送ることにしましたが、年末でもあり引越し屋さんも予約で一杯です。毎日徹夜で出発前日まで梱包でした。荷物の輸送は年明けです。病院事務の方にお願いしておきました。その地獄の忙しさの中で、こちらが何度もお断りしても家まで押しかけて来て、夜遅くまで帰らなかった困った人もいました。家内と私は出発前に全てのエネルギーを使い果たしてしまいました。


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