新しい住居

 色々ありましたが、家族4人Madison空港に無事に到着しました。日本時間の明け方4時過ぎで、徹夜で手術をした以上の倦怠感です。でもこれからあとひと頑張りが必要です。そうです、沢山の手荷物の他に成田で預けたスーツケースが出てきます。日常生活ですぐに使うものを運ぶためにスーツケースは全部で7つです。さて今度はタクシーの問題です。アメリカの大きなセダンでもこれだけの荷物は積めません。どうしたものかと思案していると、日本のミニバンよりも大きなバンのタクシーがタクシー乗り場から離れたところに止まっています。髭面で長髪のお相撲さんのように大きな運転手さんで一見怖そうでしたが、乗せてくれるかどうか聞くとあっさりOKでした。重いスーツケースを髪をふり乱しながらフーフー言ってどんどん積んでくれます。しかし3列目のシートをたたんでも荷物が入りきらず、2列目まで荷物に占領されて私は新住居まで2列目のドアのところで中腰状態でした。運転手さんも重い荷物で腰を痛めたようです。初めはこんなに荷物の多い客は初めてだ、などとあまり機嫌がよろしくなかったのですが、助手席に座っていた次女があげた日本から持ってきたお菓子「ポイフル」がおいしかったようで、途中からMadisonの解説が始まりました。ここがState capitalで、これがMendota湖で、これがUW(University of Wisconsinの略)で、ここのハンバーガーはおいしい、このスーパーは高い、ガソリンはここが安いなど一人で勝手に喋りまくっているうちに目的地です。一生懸命説明してくれましたが、頭がボーっとしていた私は何も聞いていませんでした。住むところに到着した安心感からか、今まで感じていなかった寒さが身にしみました。私がBoy! Is it cold out!と思わず言ってしまうと(運転免許証を取ってからは気分はアメリカ人、Madison市民です。言葉もついつい英語になりました。)、Madisonの冬を甘く見ちゃあいけないよ。道路もカチカチに凍るし、冬道は危ないから車の運転は気をつけろって言い残してタクシーを横滑りさせながら帰っていきました。彼にも二度と会わないだろうと思っていましたが、雪で車が滑ったらしく彼は2月に交通事故に遭ってしまってER(救急室)で感動の再会をしました。額がパックリ裂けていて大出血です。髭面にこのケガで、何ともいえない恐ろしい顔でした。でもタクシーでお世話になったので、サービスで局所麻酔薬をたっぷり使って額の傷を丁寧に縫ってあげました。勿論帰りにはMadisonの冬を甘く見ちゃあいけないよ、冬の運転は気をつけるようにと言ってあげました。
 やっとの思いで荷物を家の中に入れ、家内とほっと一息です。外は氷点下10度の寒空で、長女はいつものように車椅子の足置きをドンドン蹴っています。次女はベッドで何事もなかったかのようにまた熟睡してしまいました。セントラルヒーティングで暖かな室内だけが救いで、大荷物とにらめっこしながらこれからどうなることかと色々考えてしまいました。時計の針は午後4時前、日本時間で明け方6時前です。仕事がら徹夜も多くありますが、今回ばかりは私も家内もさすがにくたびれて少し横になろうとしましたが、何と次女が起きてしまい眠れませんでした。結局出発前日から延べ94時間一睡もできませんでした。時差ぼけは厄介なものです。子供たちも私たちも慣れるまでに1週間かかりました。やはり家族で渡米する前に生活の下準備をしておいたのは大正解でした。極寒の地でこれだけの大荷物でホテル住まい、ゼロから住居を決めたりなど疲労困憊の体では思うように行かなかったと思います。とは言え5歳で寝たきりの長女、何も分からずお気に入りの人形で遊んでいる3歳の次女、そして寒いと機嫌が悪くなる家内、これから益々寒さが厳しくなるMadisonでの新生活がどうなるのか、3人の寝息を聞きながら不安にもなりました。


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