2回目の留学と家族の問題

 2回目の留学は2003年のWisconsin大学です。以前から機能的脳神経外科の分野に興味がありましたが、ある日手術など集中して多くの機能的脳神経外科の分野の症例に接することができる大変魅力的な留学のお話を頂くことができました。
 しかしすぐに承諾という訳にはいかない事情がありました。家族のことです。実は我が家には重度障害を持った娘がいます。私が所属していた某公立病院産科での出産だったのですが、残念ながら分娩時のごく初歩的なトラブルで重度仮死、重度脳性まひとなってしまいました。日常医療行為を行っている身ですが、家族にこのような医療事故が起ころうなど夢にも思っていませんでした。私はその病院の職員でしたが、トラブルの内容を完全に隠蔽されてしまい、院長はじめ主治医も誰も肝心の内容を話してくれませんでした。以来その病院のことを反面教師にしていますが、このことがきっかけで機能的脳神経外科の分野に興味を持ち始めたことも事実です。いずれにせよ留学に関しての問題が多すぎました。長女は寝たきりで、自分では何もできません。食事もできませんから、鼻から胃に入れた管で栄養剤を注入します。日常生活でもケアが大変で、国内旅行ですら我が家では一大イベントです。そのような事情があるわけですから、アメリカに住むということは勿論、アメリカに行くこと自体大変なことで、でも何がどれだけどのように大変なのか全く見当も付きませんでした。長距離フライトのこと、体調を崩した時の病院受診のこと、リハビリのこと、そして経済的なこと、などなど大きな問題がありすぎました。


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