NORIAKI KAWAKAMI
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  パーキンソン病について
 
パーキンソン病とは;(続き)
パーキンソン病は原因不明ですが、脳幹の一部である中脳の黒質という部分にあるドパミン細胞が著明に減少しているということはわかっています。また遺伝子の研究により、一部の遺伝性パーキンソン病で遺伝子異常のために発症することも分かってきました。私がお世話になったWisconsin大学をはじめ、国内外で盛んに研究されていますから、近い将来原因がはっきりするかも知れません。症状は振戦、固縮、寡動、姿勢反射障害を4主徴としますが、便秘、涎がたれる、物が飲み込みにくい、顔があぶらぎる、性格の変化、ギャンブルなどに没頭するなど多彩な症状があります。パーキンソン病の診断に関しては4主徴が最も重要ですが、それにしても難しい言葉ですね。

4主徴を簡単に表現しますと、
振 戦
手足や頚が何もしないのに振るえてしまい、自分では振るえを止められません。手指に見られることが多く、精神的緊張で悪化するパーキンソン病で最も多く見られる症状です。
固 縮
筋肉が硬くなってしまい動作がスムーズにできなくなることです。患者さんが力を抜いた状態で関節を動かすと、独特の抵抗が感じられます。
寡 動
動作の開始が困難となり、動作が遅く小さくなります。歩こうとしても足が出にくく、歩きにくくなります(この症状は線か何かをまたごうとすると改善することがあります)。また顔の表情が乏しくなり、歩くときに腕をふらなくなります。
姿勢反射障害
姿勢反射とは、体勢が崩れそうになったときに倒れないようにする反射のことを言います。障害により体のバランスがとれなくなり転びやすくなる、止まろうと思っても止まれないという症状です。特に方向転換、動作開始時に転倒しやすくなります。

このような多彩な症状があるにもかかわらず、パーキンソン病はCTやMRI、脳波、血液検査では異常所見がありません。一方でパーキンソン病と同じような症状を呈して、原因のはっきりしているものがあり、それらはパーキンソン症候群とか二次性パーキンソン病と呼ばれます。原因として外傷、脳炎などの感染症、脳腫瘍、脳梗塞、脳出血、薬物による、一酸化炭素やマンガン中毒などがあります。厳密なパーキンソン病なのか、何か他に原因があってパーキンソン病と紛らわしい症状を呈しているのか、を鑑別するためにCTなどの検査が必要になります。パーキンソン病と診断するためには神経診察が必要です。特に初期のパーキンソン病の診断は非常に難しく、専門の神経内科を受診することが大切です。特に鑑別診断として重要なのが、多系統萎縮症(Multi-system atrophy; MSA)の1病系である線条体黒室変性症(Striatonigral degeneration; SND)、進行性核上麻痺(Progressive spranuclear palsy; PSP)、大脳皮質基底核変性症(Corticobasal degeneration; SBD)、びまん性Lewy小体病(Diffuse Lewy body disease)です。これらはパーキンソン病の症状以外に痴呆症状・眼球運動障害・片側上肢の運動障害や構音障害・幻視などを合併することが多く、パーキンソン病の症状も軽度であったり、薬が効きにくかったりします。
パーキンソン病の診断は難しく、診断までに時間がかかることもあるということは良く知っておくべきでしょう。
難しい話になってしまいましたが、先述の黒質ドパミン細胞の減少が重要で、ドパミンという神経伝達物質(神経細胞の情報を他の神経細胞に伝える橋渡しの物質)が少なくなる事が、パーキンソン病の本質です。ドパミンは運動をスムーズに行うのに必要な物質で、この脳内ドパミンが80%以上減少すると症状が出現すると言われています。

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