NORIAKI KAWAKAMI
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脳神経外科的手術-2

手術の方法
さて手術の方法ですが、最近趨勢の深部脳刺激手術に関して記します。
脳神経外科手術は殆どが全身麻酔ですが、パーキンソン病の手術の場合、局所麻酔で行います。理由は2つです。

理由その1
脳の中にある小さな核がターゲットであり、直接見ることができないため神経細胞の電気活動を観察しながらターゲットを確認する必要があり、全身麻酔だとこの電気活動が抑えられてしまって手術にならないからです。多くの場合ターゲットになる視床下核は柿の種に入っているピーナッツほどの大きさです。

理由その2
的確にターゲットがとらえられているかどうか、最終的な電極を留置した後に電気刺激により副作用が出現しないかどうかを、患者さんをリアルタイムで診察しながら確認する必要があるためです。手術中の患者さんの診察も手術成績(効果)を上げるためには欠かせないものです。


手術は両側に行い、電極留置と電池の埋め込みの2回に分けて行います。パーキンソン病の症状は片側に強く認められることもあり片側の手術だけでもよいのでは、と考えてしまいますが、片側だけの手術後に薬が減ったりするともう一方の症状が顕著になってきたりします。またパーキンソン病という進行性の病気であることからすれば、いずれもう片方にも症状が出てしまうということを考慮して、一度に両側の手術を行います。

1回目の手術はターゲットとなる脳神経核に電極を正しく挿入・留置する手術です。朝早くにメモリのついたヘッドフレームを頭に装着し、MRIを撮像します。MRIで目標とする核の位置を計測してから手術室に入ります。頭の真ん中の線から3cmほど外側で、髪の生え際の後2〜3cmを中心に3〜4cmの皮膚切開をして、頭蓋骨に中指の爪ほどの大きさの穴を開けます。その穴から脳の深部に向けて先の細く尖った電極を挿入して細胞の電気活動を確認し、最終的に電気刺激で副作用が出現しない適切な部位に電極が挿入されたことを確認して終了です。これを両側で行いますから、手術時間は全体で5〜6時間かかってしまいます。頭皮切開部の局所麻酔だけで長時間手術室でじっとしていなければなりませんから、患者さんも大変です。しかしうまく遂行できれば薬物の減量・症状改善が約束されます。フレーム装着部分と皮膚切開部分には十分に麻酔をしますから、痛みは殆ど感じません。

2回目の手術では電気刺激のための電池を体に埋め込みます。ちょうど心臓のペースメーカのようなもので、基本的に両側の鎖骨下の皮下に埋め込みます。埋め込み手術は全身麻酔で行い、およそ1〜2時間で終わります。勿論2回に分けないで一度にやってしまっても良いのですが、1回目の手術でパーキンソン病の患者さんは相当疲れてしまっています。その状況で更に全身麻酔というのは負担が大きすぎます。そしてもう1つ重要なことは、電極を正しく挿入しただけでも症状が一時的に良くなりますから、電極挿入・留置手術の適切性を観察できるという点です。アメリカでは2回目の電池を入れる手術は1回目の術後約2週間で行なっていましたが、勿論患者さんの状態が良ければ電極留置時に同時に行っても問題はありません。


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